「『ニセ科学批判』批判」問題、というかなんというか。


 「ニセ科学批判」批判、なんてのが一部で以前からくすぶっていて、まあ僕自身は(ネットでは別に特別な発言はしていないが、リアルでは)どこからどう見てもニセ科学批判者の一人なんだが、「『批判』批判」の人々の言い分にもきちんと耳を傾ける必要があるのではないか、とは、実は以前から感じていた。


 どうやら今回、id:finalventさんとid:apjさんとのあいだでなにやら込み入った応酬があったらしい。

江戸時代から明治時代の脚気の原因はカビ毒によるものだったか - finalventの日記

が発端のようだ。


 さて、実際の議論がどう進んだかには、実は僕はあまり興味がない。だからここではおくことにする。


 id:apjさんのエントリの、

http://www.cml-office.org/archive/1227318366185.html

ただ、「ニセ科学批判」は、そういう社会のルールということで展開されおらず、稚拙な科学教条主義として展開されているように見えるし、私にその批判が向けられる。それなら、その批判者に、科学というものがどれだけ難しいものか、おわかりなりますか、ということを実際にやってみてもいいかと思いました。

 思い上がるな。私にわかったのは、finalventさんが、社会の問題も含めてニセ科学を批判してきた状況を何一つ知らずに勝手な思い込みでテスト云々と言い出したということだ。

という応答に少し違和感を持った。ニセ科学批判は今やずいぶん長く続けられ、多くの多くの多くの議論が積み重ねられてきた経緯を持つ一つの運動だ。その膨大な議論の積み重ねを、完璧にフォローできている人間がどれくらいいるだろう。

 僕自身、上で「どこからどう見てもニセ科学批判者の一人」なんて断言したけれど、たとえば、ネット上で一通り目を通しているニセ科学批判系のブログとくれば、kikulogだけだ。他のサイトは必要だと感じたときしか見ないし、そうした場所でのすべての議論をフォローするリソースは、今の僕の生活にはないから。

 少数のアクティブが、その内で濃密な議論やコミュニケーションを取り交わすとき、その少数に含まれない人から見て一見不可解な、興味の方向性が現れてくることがある。その少数の中ではきちんとした経緯があり、展開があるのだが、それが周りの追随をぶっちぎってしまうのだ。僕はそうした現象を「尖鋭化」と呼ぶのだと思っている。

 ここで、id:finalventさんは、十分に(たぶん、標準以上に)知的な人だと思うが、一方で、ニセ科学運動の外側の人であり、それについて議論を積み重ねえてきた者から見れば、蒙昧で稚拙な素人、つまり大衆の一人に過ぎない。
 たとえばapjさんやきくちさんが、「稚拙な科学教条主義」などであろうはずがないことを僕はよく知っているが、けれども、彼らの言葉に大喜びで飛びついた「稚拙な科学教条主義者」は、かなり、いてもおかしくないと想像するし(例示はしない。したくないからだ)、そういった意味ではfinalvetさんの危惧だって何の根拠も無いものでもないのではないかな。

 
 さて、そうしたときに、

江戸時代から明治時代の脚気の原因はカビ毒によるものだったか - finalventの日記
finalvent 2008/11/22 12:54
apjさん、ども。「ところで、敗北宣言と受け取ってもらって結構です、などと無責任な投げ出し方をする」のが未練たらしく見えるようでしたら、すみません、まいりました、apjさんには完敗しました、これにてご勘弁を。


と思いっきり泣きを入れて「これ以上、話を続けたくありません」と哀訴する人間を相手に、

http://www.cml-office.org/archive/1227360683186.html
(1)完敗宣言も謝罪も却下し、受け取らない。
 議論はそもそも勝ち負けではないし、何についての勝ち負けだかはっきりしないものについての完敗宣言など意味不明である。
(2)適切な時期に、ぐぐって後から見つけた回答のソースを提示してほしい。
 finalventさんは曖昧な書き方や思わせぶりな書き方をするばかりで、回答を示していないのだから、私としては、回答のソースを見に行って自分で答え合わせをしながら考えるしかない。


なんて「追い込み」をかけるような行為に、どんな価値があるのか疑問に思う。

僕に言わせれば、

江戸時代から明治時代の脚気の原因はカビ毒によるものだったか - finalventの日記

関連の追記

 「ニセ科学批判」については、シンプルに私は誤解していたなというのはありますね。科学論とかの話ではなく、市民運動なんだな、ということです。これは誤認していました。自分が悪かったなと。悪い分の責めは受けるべきかな、と。

 この辺ね⇒はてなブックマーク - finalvent氏の不誠実さについて :: Archives

 私は市民運動というのは、多様にあればいいし、それにじゃまするというのをしたくないんですよ。なので、ああ、まずったな、自分の認識不足で余計なことしたなというのがありました。


この文章が書かれた時点で、とりあえずニセ科学批判者は、この対話(僕が「議論」と呼んでいないことに注意して欲しい)から得るべきものを得て、もうこれで十分だろう、と感じるのだがなあ。


 id:finalventさんは、運動の指導者たちから見れば、蒙昧な一人のおっさんにすぎないに違いない。けれども、僕は「運動」としてのニセ科学批判が、無為に尖鋭化することなく、蒙昧な大衆にも開かれたものであり続けることを望む、とここに記しておく。